LLMとは?仕組み・種類・代表モデルを図解でわかりやすく解説
AIの進化を支える「LLM(大規模言語モデル)」とは何か?
ChatGPT や Gemini、Claude、Llama など──これらの生成AIの共通基盤にあるのが LLM です。
この記事では、仕組み・種類・代表モデル・課題・今後の展望まで、
信頼できる一次情報をもとに図解でやさしく解説します。
1. LLMとは?──「言葉を予測するAI」
LLM(Large Language Model)は、大量のテキストを学習して、言語のパターンを統計的に理解・生成するAIモデルです。
仕組みを一言で言えば:
「次に来る言葉を確率で予測するAI」
ChatGPTも、前の文脈から「最も自然な次の単語(トークン)」を選び続けることで文章を作っています。
図解①:LLMの全体フロー
大量のテキストデータ
↓
【事前学習】(言語のパターンを学ぶ)
↓
【微調整/RLHF】(人間の評価で調整)
↓
【推論(Inference)】(入力に応じて回答を生成)
2. 「大規模」とは何が大きいのか?
LLMの「Large」は、次の3つの要素を指します。
要素 | 内容 | 例 |
---|---|---|
データ量 | 学習に使うテキストの総量(数兆語規模) | Web、書籍、コードなど |
パラメータ数 | モデル内部の学習重みの数 | GPT-3:約1750億個(OpenAI公表) |
計算量 | 学習時に必要な演算資源 | 数万台のGPU、数百万ドル規模のコスト |
これら3要素が「大規模さ」を構成しており、モデルの表現力を支えています。
3. LLMの仕組みを3ステップで理解する
ステップ①:トークン化(Tokenization)
AIは「単語」ではなく「トークン」と呼ばれる単位でテキストを処理します。
例:「information」 → in + forma + tion
トークン化には
BPE(Byte Pair Encoding) や WordPiece といった手法が使われています。
ステップ②:埋め込み(Embedding)
トークンを数値ベクトルに変換し、意味の近さを距離で表現します。
図解②:意味空間のイメージ
犬 ●──近い──● 猫 (同じ「動物」カテゴリ)
└─────遠い─────● 飛行機
これにより、AIは「単語間の関係性」を数学的に理解できます。
ステップ③:Transformerと自己注意(Self-Attention)
2017年にGoogleが発表した「Transformer」構造が、
現在のLLM(GPT、Gemini、Claudeなど)の中核です。
Transformerの鍵となるのが「自己注意(Self-Attention)」。
図解③:自己注意のイメージ
文:彼女が買った本は面白かった
↑ ↑
「面白かった」が「本」に強く関連づけられる
各単語(トークン)が他の単語との関連度を学習し、
文脈全体の意味を捉えられるようになる──
これがLLMの“文脈理解力”を支える仕組みです。
4. LLMの種類と代表モデル
LLMは 構造・公開形態・用途 で分類できます。
分類軸 | 種類 | 代表モデル例 |
---|---|---|
構造型 | デコーダ型、エンコーダ型、エンコーダ-デコーダ型 | GPT(Decoder)、BERT(Encoder)など |
公開形態 | クローズド(商用)/オープンソース | GPT-4, Claude/LLaMA, Mistral |
用途別 | 会話・翻訳・コーディング支援など | Gemini(マルチモーダル対応)、Codex(プログラミング特化) |
図解④:LLM分類マップ
LLM
├─ 構造別
│ ├─ Encoder(BERTなど)
│ └─ Decoder(GPTなど)
│
├─ 公開形態別
│ ├─ 商用(ChatGPTなど)
│ └─ OSS(LLaMAなど)
│
└─ 用途別
├─ 会話
├─ 翻訳
└─ コーディング支援
5. 学習の仕組みとRLHF
LLMは次の2段階で学習します。
- 事前学習(Pretraining) 膨大なテキストから言語パターンを学ぶ。
- 微調整(Fine-tuning/RLHF) 人間の評価(良い回答/悪い回答)をもとに出力を調整する。
RLHF(Reinforcement Learning with Human Feedback)は
ChatGPTなどの“自然で安全な会話”を実現する重要な仕組みです。
6. 自然な文章を生む確率と温度
AIは「確率が最も高い単語」だけを選ぶと単調になるため、
温度パラメータ(Temperature) や Top-p サンプリング でランダム性を調整します。
図解⑤:温度パラメータの効果
低温 (0.2):確実性重視 → 同じ回答になりやすい
高温 (0.8):多様性重視 → 自然で人間的な言い回しに
多様性と一貫性のバランスを取ることが「自然な対話」を生む鍵です。
7. LLMの課題とリスク
課題 | 内容 | 対応策 |
---|---|---|
幻覚(Hallucination) | 存在しない情報を出す | RAG(検索連携)による事実確認 |
バイアス(Bias) | データの偏りを反映 | 学習データの監査・多様化 |
知識の更新制限 | 学習時点の情報に限定される | 外部API・検索連携で補完 |
2024年以降、OpenAI・Googleなどは「RAG構造」を導入し、
幻覚の低減と最新情報反映を両立させています。
8. 今後の展望:LLMは「言語」から「行動」へ
LLMの進化方向は大きく3つあります。
- マルチモーダル化:文字+画像+音声を統合理解(GPT-4o, Gemini 1.5)
- 自己学習(Self-Improvement):自分の出力を評価し再学習
- AIエージェント化:ツール操作や外部API連携による自律行動
図解⑥:LLMの進化ステージ
言語理解 → 会話生成 → 複合情報理解 → 自律行動(AIエージェント)
9. まとめ
- LLMとは「言葉の確率を学ぶAI」
- Transformer構造が文脈理解を可能にする
- 種類は「構造/公開形態/用途」で分類できる
- RLHFが自然で安全な対話を支える
- 幻覚・バイアス・知識更新制限には要注意
- 今後は「マルチモーダル化」「自己学習」「エージェント化」へ進化
LLMは“人間の知性を再現する”のではなく、知性を拡張する技術です。
仕組みを理解することで、AIをより安全かつ創造的に使いこなせます。
参考・出典(一次情報)
- Vaswani et al., Attention Is All You Need (Google, 2017)
- OpenAI, GPT-4 System Card (2023)
- Google DeepMind, Gemini 1.5 Technical Overview (2024)
- Meta AI, LLaMA 3 Model Card (2024)
- Stanford CRFM, RLHF: Aligning Language Models with Human Feedback
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